薄毛対策など存在しない
これまた患者さんからよく「良い薄毛対策を教えてください」と質問されるのだが、それについてはっきりと回答しておこう。
残念ながら薄毛対策と言うものはない。いや正確に言えば現状において、薄毛にならない対策法は解明されていない。
世間では髪の毛に関して色々な憶測が飛び交っているが、そのほとんどが眉唾物だ。医学界においては、その事象が論文で書かれて、その再現性が認められた場合初めてそれが正しいとされる。
薄毛対策においてもそうだ。「スポーツすれば代謝が上がるから髪の毛が健康的になる」「わかめのミネラルは髪の毛に良い」など言い出したらきりがないのだが、これらの事は真に受けないでほしい。
確かに適度なスポーツは体に良いのは間違いないし、ミネラルも体にとっても重要だ
だがしかし、薄毛の対策法でこれらの事をしても意味がない。スポーツを仕事としている人の中にも髪の毛の薄い人もいるし、わかめを食べない人の中でもハゲていない人はたくさんいる。
これらはあくまでも体に良いというだけで、薄毛対策としては全く効果がないので真に受けてわかめばかりを食べるというような事はしないでほしい。
薄毛対策として何かをするのではなく、自身が健康的でいられるように規則正しい生活を送り、食事のバランスを考える。これだけで十分だ。
そして、もう一つ髪の毛をあまり遊ばせない事も重要だ。若い時期にはパーマやカラーリングなどで髪の毛を遊ばせることも多いだろう。だが、これらは確実に髪の毛にダメージを与える。
AGAと髪の毛のダメージとは直接的には関係ないが、このダメージの蓄積は頭皮にたまるから、それがもとで薄くなる事も十分に考えられる。なので、薄毛対策と言えるかどうかは別にして、あまり髪の毛や頭皮にダメージを与えるような事はしない方がよいだろう。
AGAの原因については完全にはかいめいされていな
AGAは遺伝
男性の多くが悩むAGAですが、その原因は何ですか?と患者さんに聞かれる事が多い。もちろん、医師としてしっかりと患者さんの疑問に答えるように日ごろから努めているが、これについて正直に言おう。
現在ではまだAGAの原因として100%これと言えるものはない。いや、正確に言えば、完全に証明はされていない。
ただ、現状において最も有力なものが両親からの遺伝によるものだ。フランスのある大学が出した論文において、「男性型脱毛症になる人の場合、あるX染色体に変異が見られた」という事が書かれている。
つまり、AGAになる人と言うのはX染色体に異常があり、その異常によってAGAのメカニズムになりやすいというものだ。つまり、親から引き継いだ遺伝子によってAGAになりやすいという。
昔から、はげるかどうかと言うのは、自身の父親を見ればよいと言われているが、この遺伝的要素がAGAにおいてかなり大きなウェイトを占めているのは間違いないだろう。
ただし、この遺伝においては重要なのは、父親ではなくむしろ母親という事になる。なぜなら男性は生物学的に言うと、性染色体がXYとなっており、AGAに影響を及ぼすであろうとされているX染色体は母親から受け継いでいるからだ。
つまり、母親の家系においてAGAの特徴を持っているのならば、AGAになる確率は非常に高く、逆にそうでないならAGAになる確率は低い。
その場合にはもちろん母親を直接見るのではなく、母親の父親すなわち祖父を見てほしい。母親は生物学的に言えば性染色体がXXとなり、仮に一方のX染色体に異常があっても、もう一方が良好ならそちらが選択される。
また、女性特有の女性ホルモンの影響でAGAになりにくい。だから、母親は参考にならないが、祖父ならあなたとほぼ同じ染色体構造を持っているので、参考にしやすい。
ストレスなど他の要因がないわけでもない
上では遺伝を中心に説明したが、おそらくAGAの90%以上は遺伝によるだろう。だが、まだAGAの原因は100%解明されていないので、それ以外の可能性についても簡単に説明する。
遺伝の次によく挙げられるのが、ストレスだ。過剰なストレスと言うのは、人の脳に多大なダメージを与えるので、それによってAGAの原因でもあるジヒドロテストステロンが生成されるかもしれないと言われている。
ただ、厄介なのがこのストレスと言うのは、どういう反応が起こるかは全くわからない。人によってあまりにも症状が違いすぎるから、憶測でしかものを言えない。
ストレスは、心と体に影響を及ぼす - 協会けんぽ 健康サポート
と言うか、他の原因はほとんどが憶測でしか語れないので、今回はこれで終わりとさせていただく。